確かに、保険証書を見ても細かい規定が多く、ほとんどの契約者は読まないままで、保険勧誘員の言葉を信じてしまうようです。勧誘員は契約を取ることが目的なので、その人に本当に必要な保険かどうか、よほどしっかりと契約内容を確認する必要があります。
どのような保険に入るべきかは、その人の年令や家族構成によって異なります。例えば3、40歳代の働き盛りで、子供がいる家庭では、大黒柱の夫にもしものことがあれば、大変なことになるので、しっかりした死亡保険金や入院保険、がん保険などに入っておくべきでしょう。しかし、60歳代以降では子供も成人しているでしょうし、預貯金や退職金、年金などもあるので、高い保険料を払ってまで保険に入る必要はありません。
ただ、どうしても入っておきたい場合にはいくつか、注意しておくべき点があります。まず、勧誘員のかたに「この保険は、保険料の何%が保険金などの支払いに回るのですか?」と聞いてみてください。あなたが支払った保険料のうち、かなりの部分が、勧誘員の手数料や各種のコストに回されています。これを「付加保険料」といいますが、この率が少ないほどいいわけです。例えば、死亡や医療保険の場合、埼玉県民共済が4%程度の経費率で運営できています。残りの96%が保険金に回ります。
多くの保険会社はこの点を明確にしていませんが、ライフネット生命は2008年から保険料に見込みで含む運営費の割合(付加保険料率)を開示しており、昨年リニューアルした医療保険では20%程度です。加入者からすれば2割も取られるわけですから、決して低いとは思えません。
さらに「この保険で保険金や給付金が支払われる確率はどのくらいですか?」と聞くのもいいでしょう。例えば先進医療特約が付いたがん保険でいえば、300万円ほどかかる重粒子線治療や陽子線治療の実施は約3000件。がんにかかるのは毎年80万人ほどですから、先進治療の給付対象になるのはそのうち0.4%程度だと計算できます。
こうした質問に明確に答えてくれれば判断できるのですが、納得の行く答えが得られない場合が予想されます。そういう商品なら十分な判断材料が示されなかったと考えて契約を見送るのも見識です。一方、明らかに見送ったほうが賢明な保険もあります。例えば、商品名がやたらと長いものです。銀行の窓口で販売されている商品に「年金原資運用実績連動保証型変額個人年金保険」というものがあります。
この商品をパンフレットで確認すると、運用期間中にかかる費用が年率3.08%となっています。つまりこの商品は、仮に年3%の運用利回りを実現できたとしても加入者にとっては費用を引かれるとマイナスになるわけですから、お金を殖やすには不向きです。
また、しつっこく勧誘してくる商品も要注意です。売り手がわざわざ時間や労力、コストをかけて勧めてくる話は「売り手にメリットがある話」だからです。いろいろと、注意すべき点を書きましたが、保険が不要というわけではありません。じっくりと保険商品を勉強し、必要な保険に入っておけば、安心の人生を送ることができます。